祭りの夜の、持ち帰れない金魚たち
——「朱色和金群」

お祭りの夜、金魚すくいの水槽の前で、たくさんの金魚を見つめた記憶はありませんか。持ち帰りたいけれど、全部は持ち帰れない。「朱色和金群」は、そんな風景から生まれた作品です。
金属と金魚
金属と金魚には、共通点があります。どちらも、人が手を加えることで形や色を変えてきたものです。
銅は、純粋であるほど赤く発色し、ほかの金属が少しでも混ざると、その赤は失われます。金魚もまた、赤い個体同士を掛け合わせることで、より濃い赤が受け継がれていきます。
この作品の朱色は、金属の表面に酸化銅の粉を擦り込んで出しています。
一匹から、群れへ
最初の金魚の作品をつくったころは、一匹を完成させるのが精一杯でした。
2026年、東京藝術大学の修了制作「錦秋」では、錦鯉や紅葉の作品とともに、朱色の和金を全部で100匹つくりました。秋の華やかさと、お祭りの金魚すくいのワクワク感を、展示の中に呼び起こしたかったからです。
いちばん大変だったのは、「たくさん」つくることでした。ヒレをつくるだけで半月。一日中ヒレをつくり続け、昼も夜もわからなくなるほどでした。
金属の色と、樹脂の水
金魚の色の部分は、すべて金属の色です。透明な水の部分は樹脂でできています。この作品は、二つの素材からできています。
金属は、熱や薬品、時間によって、さまざまな色や形に変わります。その変化は魔法のようで、錬金術と呼びたくなるほどです。金魚たちは、そうした過程を経て生まれています。
けれど、見るときに難しいことを考える必要はありません。ふと目にしたとき、自然に「かわいい」「綺麗」と思ってもらえたら、それがいちばん嬉しいです。
京都・妙顕寺へ
「工+藝」京都 2026(11月6日〜8日)では、大本山 妙顕寺で、このうち20数匹を展示します。
同じ会場には、古美術や近代の工芸の名品も並びます。長い時間を受け継いできたお寺の静かな空間で、お祭りの賑わいを思わせる金魚たちがどう見えるのか、私自身も楽しみにしています。
ぜひ会場で、金魚たちに会いに来てください。